中小企業の法律相談

福岡の弁護士、近江法律事務所が提供している法律コラムです。

外国人を雇う際の留意点

数か月前、某大手企業が、2年後に入る新卒社員の3分の2を外国人にする考えを明らかにしました。

また、昨年度のある調査報告によれば、外国人労働者の数は年々増加傾向にあり、特に中小・零細な企業の多くが外国人労働者を活用しているそうです。

こうした流れは、今後も続く可能性が高いですし、今後、国内の人口減少や少子高齢化が進めば、外国人労働者の需要はさらに拡大する可能性が高いでしょう。

では、外国人を雇用する際、雇用主としては、法的観点からどういった点に留意すべきなのでしょうか。

そして、万が一、自分が雇った外国人が不法就労者であることが発覚した場合、雇用主としてどのように対応すべきなのでしょうか。

今回は、外国人を雇用する場合に想定される法的な問題点について考えてみたいと思います。

外国人を雇う際の留意点

外国人を雇用する際の入管法上の制限は?

出入国管理及び難民認定法(いわゆる入管法です)上、我が国に在留する外国人は、入国(上陸)の際に与えられた在留資格の範囲内で、定められた在留期間に限って就労することが認められています。

在留資格については現在27種類ありますが、就労の可否という観点からは以下の3種類に分類できます。

  1. 在留資格に定められた範囲内で就労が認められる在留資格17種類
     外交(外国政府の大使、公使とその家族等)、公用(外国政府の職員とその家族等)、教授(大学の教授、講師等)、芸術(画家、作曲家等)、宗教(宣教師等)、報道(外国の報道機関の記者等)、投資・経営(企業の経営者等)、法律・会計業務(弁護士、公認会計士等)、医療(医師、薬剤師等)、研究(企業等の研究者)、教育(小・中・高等学校の語学教師等)、技術(機械工学等の技術者)、人文知識・国際業務(企業の語学教師、デザイナー、通訳等)、企業内転勤(外国の事業所からの転勤者)、興行(歌手、俳優、プロスポーツ選手等)、技能(外国料理のコック、パイロット等)、特定活動(個々の外国人に与えられた許可の内容により就労の可否が決められる在留資格。ワーキングホリデー等)
  2. 原則として就労が認められない在留資格6種類
      文化活動(日本文化の研究者等)、短期滞在(観光、短期商用、知人訪問等)、留学(大学生等)、就学(高等学校の生徒等)、研修(研修生)、家族滞在(就労外国人等が扶養する配偶者、子等)
  3. 就労活動に制限がない在留資格4種類
     永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者
     また、在留期間については、それぞれの在留資格に応じて、「3年又は1年」「~活動を行う期間」等と定められています。
  4. したがって、雇用主としては、外国人を雇用する際に、就労させようとする仕事内容が在留資格の範囲内の活動か、在留期間内の就労かを確認しなくてはいけません。

在留資格等の確認方法は?

外国人の在留資格や在留期間は、【1】外国人登録証明書や【2】パスポート面の上陸許可、在留資格変更許可、在留期間更新許可証印、【3】就労資格証明書等によって確認することができますし、在留資格等について不明な点がある場合には、最寄りの地方入国管理局に照会して確認することもできます。

外国人の不法就労について、雇用主はどのような責任を負うのか?

では、万が一、雇っていた外国人が不法就労者であることが発覚した場合、雇用主はどのような法的責任を負うのでしょうか。

この点、入管法73条の2第1項には「不法就労助長罪」が定められており、(1)事業活動に関し、外国人を雇用するなどして不法就労活動をさせる行為、(2)外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置く行為、(3)業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は(2)の行為に関しあっせんする行為、をした者には3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、又はその両方が科されると規定されてます。

したがって、雇用主は入管法違反ということで刑事責任を負う可能性があります。

また、不法就労助長罪を犯した場合、労働者派遣事業、有料職業紹介事業の許可の欠格事由にも該当してしまいます。

さらに、不法就労発覚後に、退去強制を免れさせようと不法入国者又は不法上陸者をかくまう等の行為をした場合は、入管法74条の8の罪にあたり3年以下の懲役又は100万円以下の罰金(営利目的であれば5年以下の懲役及び300万円以下の罰金)に処せられます。

不法就労外国人とは知らずに雇用した場合でも、雇用主は責任を負うのか?

当該外国人が不法就労者であることを知らずに雇用した場合、原則として雇用主が処罰されることはありません。

ただし、不法就労であることをはっきり認識していなくても、状況からみて不法就労の可能性があるにもかかわらず、確認をせずにあえて雇用した場合には処罰の対象となりますのでご注意ください。

最後に

以上より、雇用主として外国人労働者と雇用契約を結ぶ際には、法的リスクの回避という観点から、当該外国人がどのような在留資格で在留する外国人なのか、その在留資格で認められた活動内容と自社での職務内容が合致するかどうか、そして在留期間内の就労かどうかの3点を確認することが最低限必要であると言えそうです。

H22.12掲載

※掲載時点での法律を前提に、記事は作成されております。