中小企業の法律相談

福岡の弁護士、近江法律事務所が提供している法律コラムです。

独占禁止法・下請法違反に対する監視の強化

独占禁止法・下請法と公正取引委員会

近時、公正取引委員会によって、排除措置命令や警告が出される事例が相次いでいます。この背景には、公正取引委員会が独占禁止法・下請法違反に対して監視を強化していることがあげられます。

「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(いわゆる「独占禁止法」)は、公正かつ自由な競争を促進することを目的とした法律で、一定の取引分野における競争(価格カルテル、入札談合等)及び公正な競争を阻害するおそれのある不公正な取引方法(不当廉売、再販売価格維持行為等)の行為を規制しています。また、独占禁止法の特別法であり補完法である「下請代金支払遅延等防止法」(いわゆる「下請法」)は、下請事業者に対する親事業者の不当な取扱いを規制しています。

独占禁止法・下請法違反に対する監視の強化

独占禁止法違反について、公正取引委員会は、外部から提供された情報や自ら探知した事実等を検討し、独占禁止法に違反する事実があると思われるときは審査を行い、審査の結果、違反行為が認められたときは、当該行為を行っている者に対し、排除措置命令により違反行為の排除を命じます。

また、下請法違反について、公正取引委員会は、親事業者及び下請事業者を対象に定期的に書面調査を実施しており、その書面調査の結果や下請事業者からの申告をもとに親事業者の取引記録の調査や立入調査を実施し、違反行為が認められたときは、勧告・公表を行います。

なお、独占禁止法は、平成18年1月に改正されており、カルテル・談合の課徴金算定率が大幅に引き上げられ、適用対象も拡大されるなどの厳罰化が進められる一方、課徴金減免制度が導入され、早期にカルテル・談合の事実を申告すれば、課徴金の減免を受けられるようになりました。

独占禁止法によって規制される行為

独占禁止法においては、①市場を独占しようとする行為、②事業者が共同して競争を制限する行為、③公正な競争を阻害するおそれのある行為、④競争を制限することとなる企業結合等が規制されます。

①の具体例としては、事業者が単独で(又は他の事業者と手を組み)競争相手を市場から排除しようとする等の「私的独占の禁止」が挙げられます。

②の具体例としては、事業者が相互に連絡が取り合い、商品の価格等を共同で取り決め競争を制限する等の「カルテルの禁止」、国や地方公共団体などの公共工事等に関する入札の際、参加事業者たちが事前に相談して受注事業者・受注金額などを決めてしまう等の「入札談合の禁止」などが挙げられます。

③の具体例としては、複数の事業者が共同して特定の事業者との取引を拒絶する等の「取引拒絶」、取引先や販売地域によって商品やサービスの対価に不当に著しい差をつける等の「差別対価・差別取扱」、商品を不当に低い価格(たとえば実質仕入価格を大幅に下回る価格)で継続して販売し、他の事業者の事業活動を困難にする「不当廉売」、競争相手を妨害することを目的に、競争相手が必要としている物品を市場価格を著しく上回る価格で購入して入手困難にさせる「不当高価購入」、自社の商品・サービスが実際より、あるいは競争相手のものよりも著しく優良・有利であるように見せかけた虚偽・誇大な表示・公告で不当に顧客を誘引する等の「不当顧客誘引」、商品・サービスを販売する際に、不要な他の商品やサービスを一緒に購入させる「抱き合わせ販売」、自社が供給する商品のみを取り扱い、競合関係にある商品を取り扱わないことを条件として取引を行う等の「排他条件付取引」、小売業者等に自社商品の販売価格を指示する「再販売価格の拘束」、取引相手の事業活動を不当に拘束するような条件(たとえばテリトリー制による販売地域の制限等)を付けて取引を行う等の「拘束条件付取引」、取引上優越的地位にある事業者が、取引先に対して不当に不利益を与える行為(たとえば発注元の一方的な都合による下請代金の支払遅延、押し付け販売、返品、従業員の派遣要請、協賛金の負担要請等)である「優越的地位の濫用」などが挙げられます。

④の具体例としては、会社の合併、分割、事業譲渡の制限などが挙げられます。

下請法によって規制される行為

下請法には、親事業者、下請事業者の定義があり、同法は、一定規模以上の親事業者、一定規模以下の下請事業者である場合に適用されます。

親事業者には、「書面交付義務」、「書類の作成・保存義務」、「下請代金の支払期日を定める義務」、「遅延利息の支払義務」が定められ、「受領拒否」、「下請代金の支払遅延」、「下請代金の減額」、「返品」、「買いたたき」、「購入・利用強制」、「報復措置」、「有償支給原材料等の対価の早期決済」、「割引困難な手形の交付」、「不当な経済上の利益の提供要請」、「不当な給付内容の変更・やり直し」等の行為をすることが禁止されています。

ルールに則った自由競争

企業を取り巻く環境が一段と厳しくなる中、あらゆる手段を尽くして自社の利益を確保しようとするのは当然の考えといえます。しかしながら、自由競争にも独占禁止法・下請法といった法が定める一定のルールがあり、ひとたびそれを破ると、多大なペナルティを受けることになってしまいます。

独占禁止法・下請法に関する詳細は、公正取引委員会のホームページで確認いただけますので、これらのルールに違反することがないようくれぐれもご注意ください。

H20.9掲載

※掲載時点での法律を前提に、記事は作成されております。