中小企業の法律相談

福岡の弁護士、近江法律事務所が提供している法律コラムです。

企業は不当な要求に対してどう対処すべきか

【1】不当な要求に屈してはならない

企業の些細な不手際などに乗じて、法外な要求を突きつけてくる人たちがいます。例えば、商品に対するクレーム、社用車との駐車場での接触、窓口での対応等を理由として、法的には到底認められない法外な請求を強硬に主張してくるのです。このような行為をするものは、必ずしも暴力団構成員などには限られず、最近では、いわゆるカタギの人でも不当な要求を行なうケースが多く見受けられます。

彼らの最終的な要求がお金であることは明白です。企業としては、あまり騒ぎを大きくしたくないため、「今回だけは仕方がない。」と相手の言われるままの額を支払ってしまいたくもなるかも知れません。しかし、このような対応は、最悪です。そのような対応をする企業であるという情報はあっという間に「同業者」に広がり、その後も同様の手口で不当な要求を突きつけられることになりかねません。

また、目には目をと、暴力団などを利用することも最悪の対応の1つです。1度暴力団を利用すれば、そのこと自体が企業の弱みとなって、あらたな不当要求を呼び込むことになるのです。

企業は不当な要求に対してどう対処すべきか

【2】相手の要求を見極める

では、企業はこれらのクレーム等に対して、どのように対応するべきなのでしょうか。

まずは、話をよく聞いて、相手の要求を理解する必要があります。電話口では激しい言葉で抗議をしてくる人の中にも、興奮して騒いでいるだけであり、不当な利益を得ようとまでは考えていない場合もあるからです。このような人を不当な金銭を要求していると決め付けて対応をすることでかえって話をこじらせてしまうこともあるので、その点注意が必要です。

不当な要求かどうかを見極めるにはどうすればよいのでしょうか。端的にその要求の内容が法外かどうかが最もわかりやすい目安となるでしょう。例えば、商品が欠陥品であったことは事実でも、何らの実害が生じていないのに、ウン十万、百万を請求する場合には、不当な要求であることは明らかです。しかし、相手も慣れたもので、最初から額を明示して金銭の要求をしてくることはありません。粘り強く相手の要求を聞き出してください。

【3】交渉における留意点

不当要求をする者は、まず、小さな要求から大きな要求へと徐々に自分の意見を認めさせようとしてきます。「謝罪くらいしたらどうだ。」といわれて「謝罪くらいなら、いいか。」とこれに応じてしまうと、「自分の非を認めたのだから、誠意を見せろ。」と次は、暗に金を要求して来ます。これを断れば、「お前たちの謝罪は口だけか。」と言われます。このように、1つの要求に答えてしまえば、次の要求への道を開くだけです。安易に相手の要求に応じるようなことがあってはなりません。

また、曖昧な約束をすることも禁物です。「善処します。」「なんとかしてみます。」などと言ってしまえば、相手方は自分の都合のよいようにこれを解釈し、約束を破ったといって非難し、付け入ろうとしてきます。相手にいらぬ期待を抱かせてはなりません。

【4】不当要求への対抗策

まず、なにより大事なのは、毅然とした態度で一貫した対応をすることである。あやふやな対応で、矛盾があれば、そこを突かれて相手方を増長させることになりかねません。そのためにも、応対の窓口は一本化する必要があります。相手からは「お前では、話にならん、上司をだせ。」などと役員による対応を迫られることもありますが、これに応じる義務はありません。クレーム処理を誰が担当するかは、会社が決めることだからです。

交渉に当たっては担当者が一人だけだと、相手のペースに飲まれてしまうことが多いので、相手より多数で交渉にあたるよう心掛けるべきです。また、同様に交渉の際に相手方の自宅や事務所におもむくことは、相手のペースに巻き込まれることになるので、避けた方がよいでしょう。

相手方との会話についてはテープなどに録音するべきです。ピンマイクなどをつかって隠し撮りすることもいわゆる盗聴にはあたりませんし、プライバシー権の侵害の問題も生じないので安心して録音して下さい。また、相手方に解るように録音することも時には効果的です。録音されている以上、相手は下手なことは言えなくなるからです。相手方は録音を嫌がることもあるでしょうが、「上司に正確に報告するため」と言って、堂々と録音してかまいません。この録音テープは、後に警察に被害届を出すときや、仮処分を求める際の重要な証拠ともなるのです。

相手が会社に居座り、退去の要求があったにもかかわらず出て行かない場合には不退去罪(刑法130条後段)が、何度も会社に押しかけてきたり、架電を繰り返すようであれば業務妨害罪(刑法233条後段)が、生命・身体などに危害を加えるような発言があれば脅迫罪(刑法222条)が成立します。不当な要求をするものは、言葉では「警察など怖くない。」「自分は正当な要求をしているだけだから、警察が動くわけがない。」などと強がりますが、実際は警察の介入を恐れています。警察に通報することも効果的な対策になるのです。

また、弁護士に依頼して、何ら支払い義務がないことの確認を裁判所に求めること(債務不存在確認の訴え)、面談強要や会社への立ち入りを禁止してもらうこと(仮処分)も有効な手段となります。

交渉の結果、いくらかの金銭を支払うことが相当だと判断した場合でも、曖昧なままに支払を済ませてはなりません。その後も引き続き不当な要求が行われる可能性があるからです。「両当事者間には、いかなる債権債務も存在しないことを確認いたします。」「以後、いかなる請求もいたしません。」等の文言の入った示談書をきっちりと作成し、重ねて請求がなされることを防がねばなりません。

H16.06掲載