中小企業の法律相談

福岡の弁護士、近江法律事務所が提供している法律コラムです。

どうなる?有限会社

有限会社法が廃止されます

平成17年6月29日に、新しく「会社法」が成立し、平成18年4月1日から施行されることは、新聞でも大きく取り上げられました。そして、現行の有限会社法は、新会社法の施行に伴い廃止され、会社の規律を新会社法に一本化することとなりました。

このため、同法が施行される予定の平成18年春以降は、新たに有限会社を設立することができなくなります。

では、今ある有限会社はどうなってしまうのでしょうか。

どうなる?有限会社

既存の有限会社は、会社法施行日以降は、会社法の規定による株式会社として存続することとなります。そこで、既存有限会社における「社員」は「株主」に、「持分」は「株式」に、出資一口は一株とみなされることになります。

もっとも、既存有限会社に、新会社法の規定をそのまま適用すると、実情に合わない部分が出てくるなどして、継続的安定的な運営が難しくなることも考えられます。

そこで、運営の継続性・安定性を確保するために必要な限度で有限会社法と同様の規律を維持するための特則として、整備法(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)が、新会社法と同時に施行されることになっています。この整備法により、既存の有限会社には、新会社法の規定がそのまま適用されるわけではなく、「特例有限会社」として、現行の有限会社法に準じた取扱がされることになるのです。

商号変更の必要性

既存の有限会社が、整備法によってほぼ従来どおりの取扱を受けるためには、新会社法施行後もその商号中に従前どおり「有限会社」の文字を用いなければなりません。つまり、「有限会社」という名前を持つ「株式会社」となるわけです。これを「特例有限会社」といいます。

したがって、既存の有限会社は、特に商号を変更する必要はありません。

再登記の必要性

既存有限会社の登記を特例有限会社の登記とみなすことにより、既存有限会社の登記簿に登記されている事項については、特例有限会社への移行に伴い登記し直す必要がないことになりました。

また、発行可能株式総数や発行済み株式総数の定め、譲渡制限種類株式及び公告方法は、特例有限会社への移行に伴い、新たに登記事項とされますが、これらの内容は登記されたものとみなされ、職権で登記されることになります。

定款変更の必要性

既存有限会社から特例有限会社への移行にあたっては、そのために定款変更の手続をとる必要がないようにするため、定款変更のみなし規定が置かれています。ですので、定款を特に変更する必要はありません。

ただ、実際には定款に記載されていないにもかかわらず、記載されているものとみなされる事項がある場合には、株主や債権者が定款を閲覧するときに、そのような定めがないものと誤解するおそれがあります。このため、整備法によって定款に記載があるものとみなされる事項については、閲覧等を請求する株主又は債権者に対し、その旨を示さなければならないこととされています。示す方法について特に決まりはありませんが、定款に別紙をつける形が望ましいのではないでしょうか。また、その後の総会で定款変更決議を行って、一目でわかりやすい定款記載にしておくべきでしょう。

通常の株式会社へ移行するには

特例有限会社から、通常の株式会社へ移行する場合には、商号中に「株式会社」の文字を使用する商号変更の定款変更をするのみで、通常の株式会社へ移行することができます。そして、特例有限会社についての解散登記と、商号変更後の株式会社の設立登記をすることにより、移行の効力が生ずることとなります。

有限会社の今後

このように、既存の有限会社においては、特に複雑な手続をとることなく、特例有限会社として存続することが可能になっています。

また、新会社法においては、株式会社の機関設計がかなり自由になっており、大会社基準に該当しなければ、従前の有限会社と同様、監査役を設置しない形態もとることができます。また、最低資本金制度もなくなりますので、過度の負担なく、株式会社へ移行できるものと思われます。

有限会社だけでなく、株式会社においても、この機会に、それぞれの会社の事情からどのような組織設計が最適か、じっくり検討してみてください。

H17.09掲載

※掲載時点での法律を前提に、記事は作成されております。