中小企業の法律相談

福岡の弁護士、近江法律事務所が提供している法律コラムです。

事業承継問題を考える

はじめに

戦後日本経済が奇跡的に復興・発展したのは、今や大企業となった幾つかの超有名企業とともに、企業数で9割、雇用では7割を占める中小企業の「頑張り」があったからにほかなりません。こうした中小企業は、戦後一代で築き上げたオーナー企業が多いのですが、戦後60年が過ぎ、後継者問題が起こっています。新会社法もこのような現象を視野に入れた規定を新設していますし、中小企業庁も平成18年10月に「事業承継ガイドライン20問20答」を作成しています。これらは、中小企業における事業承継問題が、国にとって重要な問題であるからにほかなりません。

事業承継問題を考える
Q.何が問題なのですか?

事業承継がうまくいかないと、最悪、会社が廃業してしまうことになってしまいます。そうなれば社会にとって大きな損失ですし、取引先や従業員に大変な迷惑をかけることになります。

Q.では、どのようにすればいいのですか?

中小企業の社長の平均年齢は57歳から58歳。平均引退年齢は67歳くらいです。この引退までの約10年の間に事業承継計画を立てて実行するということを中小企業庁は勧めています。

Q.事業承継計画とは、一体なんですか?

事業承継の方法には幾つかの方法がありますが、そのパターンに応じた事業承継の実行プログラムのことです。「事業承継ガイドライン20問20答」によれば、例えば、

  1. 会社内部においては、1年目に会社法上の「売渡制度」を導入し、そのために定款の変更を行なう、2年目から3年目にかけては、旧来の株主から株式を取得(金庫株)する、7年目には黄金株を発行する
    他方、
  2. 経営者自身は、1年目に公正証書遺言を作成する、7年目に黄金株を取得する、これと平行して1年目から6年目までは暦年課税制度を利用した株の贈与、7年目から10年目までは相続時精算課税制度を採用した株の贈与を行なう
  3. 後継者自身は、1年目は平取締役として工場を担当し、2年目から経営セミナーに通い、3年目に常務。

・・・というプログラムが例示されています

Q.「事業承継の方法」には幾つかあるとのことですが、具体的にどのようなものがあるのですか?

ひとつは、長男等親族に承継させるパターン、二つ目は例えば右腕となっている従業員に承継させるパターン、三つ目は身近に後継者がいない場合などに考えられるM&Aです。ご自身の環境・条件にあわせ最善のパターンを選択するべきです。    長男に承継させるパターンを、具体的に考えてみましょう。

ケース

甲会社の100%オーナー社長のAさんには、B、C、Dの3人の子どもがいるが、長男のBに会社を継がせたいと考えている。どのような問題点があるか。この考えを円滑に進めるためにはどのようにすべきか。

Q.いかにBに株を集中させるか、が1番の問題ですね

そのとおり。Aの相続時に何の手立てもしていなければ、株も均分相続となって、Bは安定した経営をしていくことがきません。お家騒動の原因ですね。

Q.どうすればいいのですか。

当然、遺言を作成しておくことが必要となります。しかし、単に「全ての株式をBに相続させる」という遺言を作っても、CやDの遺留分を侵害することになって、株を一部取り戻されてしまう危険があります。

Q.遺留分とは、一定の法定相続人が、法定相続分の半分まで相続財産の回復を求めることのできる権利ですね。

そうです。

Q.では、どうすればいいのですか?

幾つか方法があります。第1は、今のうちに議決権制限株式を発行するのです。議決権制限株式とは議決権のない株式です。そこで、Bには議決権のある普通株式を相続させ、CやDには議決権制限株式を相続させるのです。第2は、相続時に、会社からCとDに対し、株の売渡請求を行なう方法です。遺言を作らなくても、CやDは会社に株を売却することを強制されるのです。ただし、この場合、円滑に売渡請求権を行使するために、BはAの生前から社長になっておくことが肝要でしょう。

Q.会社法を活用するわけですね。

そうです。その他、もちろん税務上の問題もあります。弁護士や税理士などの専門家の助けを借りて、上手に事業承継問題を解決する必要がありますね。

H19.11掲載