中小企業の法律相談

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非正規社員の雇用ルールが新しくなります!

労働契約法の改正

近年、いわゆる非正規社員の割合が増大しています。ここでいう非正規社員とは、「有期労働契約」(有期雇用)による労働者、つまり1年契約、6カ月契約など期間の定めのある労働者のことです。職場によって、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託社員など色々な呼称がありますが、期間の定めのある労働契約であれば、呼び方にかかわらず、「有期労働契約」となります。

これに対し、いわゆる正社員は、期間の定めのない労働契約ですので、「無期労働契約」ということになります。

非正規社員の数は、全国で約1200万人と推計され、全労働者の2割以上に上るとのことです。しかも、その約3割は、長期にわたって契約更新を繰り返し、正社員とあまり変わらない継続的な業務にあたっているようです。しかし、非正規社員というだけで、雇止めの不安にさらされ、またその不安のために不合理な労働条件を甘受せざるを得ないという実態があります。

労働契約法の改正

このような問題を受けて、昨年8月10日に、労働契約法の一部を改正する法律が公布され、有期労働契約についての3つのルールが規定されました。

  1. 無期労働契約への転換(18条)
  2. 雇止め法理の法定化(19条)
  3. 不合理な労働条件の禁止(20条)

このうち、2.については昨年の公布とともに施行され、1.と3.は、平成25年4月1日から施行されることになっています。

ルール[1]:無期労働契約への転換

有期労働契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合は、労働者の申込みによって、無期労働契約に転換することになりました。

例えば、1年契約のパート社員がいるとします。契約を5回更新すると、通算で5年間を超えて6年目に入ることになりますが、この6年目の契約期間中に、パート社員が「無期転換したい」と会社に申込むと、この時点で無期労働契約が成立し、7年目からは自動的に無期労働契約に切り替わります。つまりパートから正社員に切り替わるわけです。

この契約期間通算のカウントは、平成25年4月1日以降に開始する有期労働契約が対象です。平成25年3月31日以前に開始した有期労働契約は、通算契約期間に含めません。

また、無期転換を申し込まないことを契約更新の条件とするなど、あらかじめ労働者に無期転換申込権を放棄させるようなことはできません。もし事前に「無期転換を申し込まない」と言っていたとしても、そのような意思表示は、一般的には公序良俗に反し無効ということになるでしょう。

ルール[2]:雇止め法理の法定化

有期労働契約は、使用者が更新を拒否したときには、契約期間満了ということで雇用関係が終了します。これが「雇止め」です。

これまで、雇止めが不当であるとして雇用関係の継続を確認する裁判が数多く提起されてきました。そして、最高裁において、労働者保護の観点から、一定の場合には雇止めが無効であるという判例上のルールが確立していました。

今回の労働契約法改正によって、これまでの最高裁による判例上のルールが明文で法律に定められたわけです。

具体的には、有期労働契約の更新が打ち切られた場合、[1]これまでの契約更新の繰り返しによって無期労働契約と実質的に同じ状態にあるときや、[2]更新されるはずだという労働者の合理的な期待が認められるときには、実質的には無期労働契約の解雇と同様の規制がかかることになります。

つまり、非正規社員についても、契約更新の繰り返しがあったり、更新されるとの期待が認められるような場合には、正社員の解雇の場合と同様に、雇止めに

合理的で社会的に相当と認められる理由が必要であり、そうでない雇止めは無効ということになります。

ルール[3]:不合理な労働条件の禁止

同じ会社の中で、労働契約が有期か無期かという違いによって、不合理に労働条件に差をつけることを禁止するルールです。賃金や労働時間といった労働条件だけではなく、福利厚生や服務規律、災害補償においても、不合理な違いを設けることはできません。

例えば、パート社員も正社員とまったく同じ仕事をしているのに、パート社員というだけで賃金が不当に低いとか、通勤手当がないとか、食堂を利用できないというような差をつけることは、特に理由がない限り許されないと考えられます。もし不合理な差をつけた場合には、パート社員に不利な労働条件は無効になり、正社員と同じ労働条件が認められることになると思われます。

5年以内での雇止めなら許される?

使用者の立場からすると、ルール[1]の無期労働契約への転換による影響が大きいため、とにかく5年以内に雇止めをしようと考えてしまうかもしれません。

しかしながら、5年以内の雇止めにも、ルール[2]はもちろん適用されます。不合理な雇止めは、通算5年以内であろうが、解雇と同様に禁止されるわけです。無期転換を回避するための雇止めには、合理的な理由が認められるとは考えにくいところです。

したがって、5年以内であれば簡単に雇止めが認められるというわけではなく、無期転換後の解雇とそれほど変わらない規制がかかっているということに注意が必要です。

有期労働契約は、本来、臨時的・一時的な業務を行わせるための雇用形態であって、継続的な業務を行わせることは前提とされていません。継続的な業務のためには、正社員(無期労働者)を雇い入れるのが原則です。継続的業務のために有期労働者を雇って、都合のいい時に契約を打ち切るということは、やはり労働契約のあり方として問題があるということです。

今回の労働契約法改正を契機に、非正規社員の雇用のあり方について、再検討すべきであると思われます。

H25.2掲載