中小企業の法律相談

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株式の相続について

1 株式の相続

株式会社の株主が死亡した場合、その株式も不動産や預貯金などと同様に、相続の対象となります。

当該株式が、会社の承認なくしては譲渡できない譲渡制限株式であっても、相続のような一般承継による株式の移転は譲渡制限の対象とはならないため、当該株式は相続人に承継され、相続の対象となります。

もっとも、相続人が複数いる場合、相続の対象となる株式は、相続によって各相続人の法定相続分に応じて当然に分割されるというわけではなく、遺産分割がなされるまでの間は、相続人の準共有状態になると解されています。この点、預金債権が、相続により法定相続分に応じて当然分割されるのとは異なります。

株式の相続について

そうすると、たとえば、A株式会社(以下「A社」といいます)の株式を100株有していた株主B(以下「亡株主B」といいます)が死亡し、亡株主Bには、妻C、長男D、次男Eがいるという事例について考えてみますと、A社の株式100株は、妻C、長男D、次男Eの3人の準共有状態にあるということになります。妻が法定相続分である50株(2分の1)、長男と二男がそれぞれ法定相続分である25株(4分の1ずつ)について、当然に株主となるわけではありません。

2 遺産分割協議を行うことが必要

このように、相続された株式は、共同相続人の準共有状態となるため、相続の対象となる株式については、相続人間で遺産分割協議を行って、株式の帰属を決める必要があります。

遺産分割協議を行い、遺産分割協議がまとまった場合には、株式を相続することになった相続人が会社に対し名義変更等の手続をとり、株主としての権利を行使することになります。

3 遺産分割協議が未了の場合

もっとも、相続人間で、相続についての争いが生じ、遺産分割協議が長期にわたってしまうことも少なくありません。とりわけ、中小企業において、支配株式が共同相続された場合などに、相続人間で誰が会社を継ぐかということなどを巡って争いが生じることはままあります。

このように相続をめぐる争いなどが生じるなどして、遺産分割協議が未了の場合には、当該株式は相続人の準共有状態のままですので、株式の共有について定めた会社法106条の規定に基づき権利行使を行うことになります。すなわち、株式の権利を行使する者1人を定めて、会社に対しその者の指名を通知し、その定められた権利行使者が、株主としての権利行使を行うということになります

この権利行使者を誰にするか、という点についても争いになることが考えられますが、この権利行使者の指定は、共有物の管理行為として、持分価格に従いその過半数で決せられると解されています(最判平成9年1月28日判決参照)。

したがって、上記事例において、妻Cと長男Dは、長男Dを権利行使者としたいと考えているが、次男Eは自分が権利行使者になりたいと主張してこれに反対しているといった場合には、妻Cと長男Dの持分価格が過半数となるので(2分の1+4分の1)、長男Dが権利行使者として指定されることになります。

もっとも、この権利行使者の指定に関して、裁判例の中には、共同相続人による株式の準共有状態が、遺産分割が終わるまでの暫定的な状態にすぎないため、共同相続人は、この段階での権利行使者の指定及び同人による議決権の行使方法について、事前に議案内容の重要度に応じて協議することを必要とすべきであるとして、全く協議も行わずに行った権利行使者の指定及び同人による議決権の行使を権利の濫用として許されないとしたものもあります(大阪高裁平成20年11月28日判決参照)。

4 相続人に対する売渡しの請求(会社法174条以下)

上述したように、譲渡制限株式であっても、相続人は、当該株式を相続により承継することになります。そうすると、会社にとっては、好ましくない相続人でも株主となってしまうことがあり、会社としては不都合な事態にもなりかねません。

そこで、会社は、相続その他の一般承継により当該譲渡制限株式を取得した者に対して、当該株式を当該会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることにより、相続人から当該株式を取得することが可能となります(相続人等に対する売渡し請求、会社法174条)。

この定款の規定に基づき、会社が相続人に対して売渡しの請求をする場合には、株主総会の特別決議が必要となります(会社法175条1項、309条2項3号)。

また、売渡しの請求は、会社が、相続があったことを知った日から1年以内にしなければなりません(会社法176条1項)。

株式の売買価格については、原則として、会社と相続人との間の協議によって決定することになりますが、会社又は相続人は売渡しの請求があった日から20日以内に裁判所に対して価格決定の申立てをすることができ、この申立てがあった場合には、裁判所が売渡請求時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮して売買価格を決定することになります。売買価格の協議が調わず、価格決定の申立てもないまま20日が経過した場合には、売渡しの請求の効力は失ってしまいます(会社法177条)。

上記事例では、A社が、定款で、相続人に対する売渡しの請求に関する規定を設けていれば、A社が亡株主Bの妻C、長男D、次男Eが株主となることを望まない場合には、A社は相続があった日ことを知った日から1年以内に、株主総会の特別決議をして、相続人である、妻C、長男D、次男Eに対して、相続された株式の売渡しの請求をすることができます。

H25.5掲載